北九州記念展望 〜2頭の牝馬〜

メイショウバトラーの才能を見ぬいたのは幸騎手だった。
デビューが去年の今の時期というおそさだったメイショウバトラー*1。難波騎手はメイショウバトラーを抑えつけていた。絶好の先行力をもつ馬で1完歩が異常に早いこの馬には馬群は似合わなかった。早くからその才能を高く評価していた調教師は小倉で無理なのりかたをした難波騎手をおろし、野分特別で幸騎手をのせた。このとき、好きにいかせてくれとでも指示されたのかあっさりハナを奪う。
ハンデ戦でこのクラスを出るにでれない古馬を尻目に直線で脅威の粘りを見せる。


この一線で自信をつけた陣営は直接秋華賞



この秋華賞はまさに一騎うち。2冠馬スティルインラブが前哨戦で2冠馬をおさえつけたアドマイヤグルーヴが母の雪辱をはらしに淀へ。メイショウバトラーにとっては初重賞挑戦がG1となった。しかし、条件戦から一気にG1へと挑戦するには、その雰囲気(3冠をかけた)はあまりにも厳しい条件だった。騎手も乗り変わり*2武幸四郎で逃げを打ってくれない。淀の坂にも対応できずに馬群でおりあえない。



それでも、勝ち馬から0.4差の7着。これは陣営にさらなる期待をさせる。つづくG1エリザベス女王杯へも迷うことなく出走。ここでは別の敵、スマイルトゥモローの超逃げに悩まされる。大逃げ。上位陣はスティルインラブ以外は差し馬。だが、スマイルトゥモローが大敗するなかで1.1秒差だった。阪神牝馬Sでもスマイルに、今年の牝馬Sではトーセンリリーという狂気になやまされた。自分のレースができていない。



だが、北九州記念にはメイショウバトラー以上の先行力のある馬もまともについてこれそうな馬もいない。遅咲きの華が3冠馬相手に自信をつけた戦略の競馬をみせつけることができそうだ。騎手は佐藤哲三。小倉も知っている騎手だ。この馬の先行力を無にするような騎乗はしないだろう。



受けてたつ側


歴史に名を刻んだサンデーサイレンス



サンデーサイレンスはその名を記録としても日本競馬に素晴らしいほど残している。名実ともにトップサイヤーである。その子供達は数々のG1をとり、父へ多くの勲章をもたらした。



ただ、サンデーサイレンスにはもたらされなかった勲章がある。



年度代表馬


日本のリーディングサイアーをとった馬はみなそれぞれその年度を代表とする馬を出している(表1)のだが、サンデーサイレンスの子供ははその年で大活躍した馬を出しながらも年度代表馬とはならなかったのだ(表2)*3スティルインラブ牝馬3冠という快挙をなしとげながら、年度代表馬の座はシンボリクリスエスにもっていかれた。



屈辱



スティルインラブは確かに牡馬との対戦はなかった。さらに今年に入ってからも春のグランプリ宝塚記念を目指してきたが、牡馬一線級にははっきり水をあけられる形になってしまった。ライバルのアドマイヤグルーヴからも差がつく負け方。



松坂世代効果*4によって今年の4歳牝馬はレベルが高く、次から次へと有力馬がでてくる*5



スティルインラブがとった3冠の時計も全てかなり優秀*6。別定で58キロを背負う条件とはいえメイショウバトラーには負けられない。



前走と前々走について負けた理由は本当に牡馬相手ではかなわないからなのか?



それはちょっと違う。スティルインラブは去年のパフォーマンスをみても桜花賞秋華賞の内容が素晴らしい。どちらも直線までに進路をオフにして直線の切れ味で勝負したレースである。また、エリザベス女王杯ではまくりあいの末にアドマイヤグルーヴに競り負けた。いかにも、サンデーサイレンス産駒らしい瞬発力と先行力を武器にするマイラータイプだ。



スティルインラブが負けたラップをみていくと先行力と切れ味で勝負するにはつらいまくりレースばかりであるのがわかる*7金鯱賞宝塚記念タップダンスシチーのオナニーレースだったことがスティルインラブには災いしたのではないだろうか*8



北九州記念は馬場のきれいな時期の小倉で行なわれる。さらに、スタンド前からスタートなのだがその地点から2コーナーまで坂になっている。そのため、逃げ馬がかち合わなければ13頭ほどならば先行争いが激化することは少ない。さらに、そこからは全て下りでなにもなければ逃げ切り。



今回は強い逃げ馬のメイショウバトラーがいるため他馬もからみにいくことはなさそうだ。ウインクリューガー*9がからむ可能性はあるが、ハナをとりたいというよりも2番手ならばそれでもいいタイプ。有力馬で他に先行しそうなのはユートピアだけ。他の有力馬は先行して味のあるタイプでもなくテンも早くない。この2頭でほとんど馬券はきまりだろう。



ダンツジャッジは前走では東京の長いところを利用してなんとかつめよったが、あれでは届かない。1600〜1800のレースに入ると先行力のあるタイプでもなく、直線が短く全部下りの小倉では届く暇もない。ただ、堅実な伸びをしているのでメイショウバトラーに競りかけた馬が自滅していった場合、馬券対象に入ることは可能。オースミコスモにしても蝦名だったら、ここ2戦のように先行しないはず。小倉にきたこともない蛯名だけに厳しい。


ローズS 12.6-11.4-12.4-12.3-12.3-12.4-11.9-11.7-11.9-12.6
金鯱賞 12.3-10.6-10.6-12.5-12.2-11.9-11.9-11.8-11.6-12.1
宝塚記念12.6-10.7-11.0-12.1-12.1-12.5-11.9-12.1-12.0-11.4-12.7
エリ女 12.3-10.8-11.3-11.3-11.8-12.2-12.7-12.1-12.1-12.4-12.8

桜花賞 12.4-11.3-11.3-11.7-11.7-11.8-11.5-12.2
秋華賞 12.5-11.0-11.9-12.2-12.2-12.1-11.7-11.6-11.9-12.0

表1 主なトップサイアーの年度代表馬


トニービン     エアグルーヴ ジャングルポケット
ブライアンズタイム ナリタブライアン マヤノトップガン
ノーザンテースト  ダイナガリバー
パーソロン     シンボリルドルフ
トウショウボーイ  ミスターシービー
テスコボーイ    トウショウボーイ キタノカチドキ


表2 サンデーサイレンス産駒で同年にG1を複数勝った馬


99 スペシャルウィーク 天皇賞 春秋 ジャパンカップ
00 エアシャカール   皐月賞 菊花賞
01 マンハッタンカフェ 菊花賞 有馬記念
03 スティルインラブ  牝馬3冠 ネオユニヴァース 皐月賞 日本ダービー

*1:遅いデビューといったらシャトルを思い出す

*2:もちろん幸はスティル

*3:スペシャルウィークが特別賞をとっただけ

*4:抜けた馬がいることで、全体のレベルがUPする

*5:メイショウバトラーチアズメッセージメモリーキアヌマイネヌーヴェルオースミハルカ

*6:桜花賞1:33.9、オークス2:27.5、秋華賞1:59.1、エリザベス女王杯2:11.8

*7:あがり5Fが早く、最後の1Fが遅い

*8:となると、タップが出るレースはもう買えない

*9:この馬も実は前走あんだけひどい競馬させられて0.7秒しか負けてないのな。状態がよくて、時計がかかる馬場ならもう一回狙ってみたい