スプリンターズSの意味

このレースがG1である理由は数多く、それはもう2歳戦から数多く容易されている1200m競走。だが、多くの目的はスピードがあるから1200mではなく手ごろなレースが多いから1200m。スタミナを要求する1600mでは足りないスピード一本の気性の荒い馬のレースである。


1分7秒あるいはそれよりも早いスピードで駆けることのできる馬が誕生する。彼馬達はスピード能力だけでレースを勝ちきる。そのチャンプを決めるレース。彼らの使命はレコードを出すことにあると思う。


サラブレッドの理想卿であるスピードへの挑戦、スピードへの固執


中山1200mはスプリントのチャンピオンを決めるにあたって、中京1200mと比較しても遥かに優れたコースである。スタートしての直線から角度の浅い3コーナー、さらにこのコーナーから直線になって4コーナーに向かう。これが素晴らしい。他のコースでは3〜4コーナーという表記が正しくコーナーリングロスは著しいものでスピードが流れていくのは目に見えている。中京1200mは最初の加速よりも最後の加速のほうが重要なスプリンター的なコースではない。かといって新潟のように直線のレースになると今度は内外の馬場差が大きくなりすぎてしまう。中山の1200mは直線でレースをするよりもスプリンターズステークスにふさわしい舞台だ。それは過去の高松宮記念馬とスプリンターズS馬を比較してもわかるだろう*1


私は9月の中山にこのレースを移したのには賛成だった。9月中山は年で1番時計の出る時期である。スプリント王を決めるレースとしては時計の出易い絶好の舞台だ。ただ、改修して1200mのスタート幅を広く外目にゲートを置くのはちょっと納得がいかない*2。もうちょっと内でもいいとは思うのだが*3



デュランダル


そういうこともあって私はデュランダルをスプリンターとしては認めていない。この馬は後半を33秒で走れるという変態的な馬であってあろうことか前半はほとんどサボっているわけだ。誰もが急ぐところをゆっくり出て*4、最後に他馬と1秒近く違う脚が使って追い込んで来る。本来、小さい不利が致命傷となるためタブーであるスプリント戦での追い込み。大外をまわして不利だけは受けないように乗って結果を残している。これが凄い。マイルでもチャンプとなっておりスプリンターというカテゴリには入らない馬。


池添騎手にしてみれば今年のG1で2度2着しているレースはどちらも福永祐一に勝たれている。彼の対抗心もかなりのもの。枠により変わるが外枠をとったならサニングに先着することを勝つこととデュランダルの力を発揮することだけを考えて動くだろう*5


中山・阪神で5−0−1−2*6という脅威の数字。坂でも止まることのない追い込みで池添の復讐は確実。


1,2,3着



今年のセントウルSとシルクロード


この2レースはどちらも前半で完全にサボって後半あがり勝負になっているダメ1200mレースの典型である。平坦のほうが得意に見えるキーンランドスワンがどちらも好走し、ゴールデンキャストが勝利できたのはこの展開の賜物。ゴールデンキャストの過去のレースを見ても後傾ラップレースで好走し、前傾ラップで惨敗していることからしてもこの2頭はこういうレースが得意なのであろう。後傾ラップならばこの2頭の出番もある。


セントウルS 12.3-11.1-11.2-11.4-10.5-11.7
シルクロード 12.5-10.8-11.1-11.1-11.2-11.9

ゴールデンキャスト 1200m成績
小倉新馬  33.1-36.0 2着
小倉フェニ 33.5-35.1 3着
小倉未勝利 34.0-36.2 1着
中京ファル 33.8-35.9 4着
京都シルク 34.4-33.4 12着
中山オーシ 33.2-33.9 13着
福島民放杯 32.8-33.1 16着
小倉佐世保 33.1-33.2 2着
小倉日経OP 33.7-33.2 1着
北九州短距離33.1-33.2 8着
阪神セント 34.6-33.1 1着
結果が出ているのは後傾ラップばかり

外国馬


今回は外国馬のデータを知るためだけに競馬ブックを買ってみた。感想は正直買わなくてもよかった*7。日本のG1に乗り込んでくる場合の外国馬の条件としてはせめて前走くらいは勝っておかなくてはならないのだが、今回出走するメンバーの前走は


アシュダウンエクスプレス 英スプリント G1 9着 0.8差
ケープオブグッドホープ  英ジュライC G1 4着 0.4差
フェアジャグ       独ゴルデネバ G2 9着 1.2差
どの馬も完敗していて、状態も良いわけではなくはっきり言えば用無しだろう。G1を勝っているのもフェアジャグだけ。脚質にしてもどの馬も後方からのタイプのようで先行力があるわけではない。


ケープオブグッドホープ*8は成績は安定しているが、キネーンを主戦としていての乗り変わり。とても日本の上位陣に関われる内容ではない。



カルストンライトオのペース


カルストンライトの凄さはその先行力にある。馬なりで1Fで逃がし、テン3Fを33秒台でつきはなす。前走のアイビスサマーダッシュでは5番枠からスタートの差だけで一気に有利な大外までつきぬけた。このスピードについてくるにはムチを入れて勝負に行かなければならない。1200m戦では1度しか後傾ラップをつくっておらず、この馬がつくるペースは必ず前傾ラップになる。後傾ラップを得意とするゴールデン、キーンランドにはつらいところだ。


6月に復帰した今夏、バーデンバーデンCでは半仕上がりで最後の最後まで息を上げずにワンダーシアトルにクビ差。函館SS高松宮組の集まるレースで堂々と先行しシーイズトウショウに先着され、押し切りとはいかなかったものの*9乗り変わりでも素晴らしい内容。アイビスサマーダッシュでは1歩も影を踏ませぬ完勝。


大西騎手との相性もよく3−1−2−2*10。直線で並ばれると抜かせない持続力があるが、後続には離れて差されると勝つまではいかない。今の中山は無理から先行した馬でも残れてしまうような馬場状態で前にいる馬が有利である。今回勝つ可能性の高い馬は後ろから勝負する馬であり4コーナーでつかまらなければそのまま勝ちきることができそうだ。


問題は関東への遠征成績が悪いこと*11
原因としては2点が考えられる


・急坂がダメ
・遠征がダメ
新潟で圧倒的な力を見せていることからすると遠征を苦にしている様子はない。坂については、福島準OPで1勝以外は京都で4勝、新潟で2勝、小倉で1勝。ウォーニングらしく平坦で粘りこむのが得意。坂があるコースの成績を見ると中山では先行せずにちぐはぐなレースをしたスプリンターズSと朝日FS。0−1−2−2の阪神のほうを見ると3着以下に負けているのは1年休みあけのセントウルSと1600mの菩提樹S。この馬が苦手というほどではなく坂を得意としている差し馬に対抗すると負けてしまうという問題があるのだろう。


負けるとしたらデュランダルサニングデールが外から強烈に追い込んで来るパターンだが、現在の中山は外を回して来る追い込みには若干つらい馬場である。相手は力を出しにくく勝ちきる可能性は十分ある。


1,3着



カルストンライトオが離れた差し馬が届けば弱いという点を考えると

カルストンライトオデュランダル   →サニングデール
デュランダル   →カルストンライトオサニングデール
デュランダル   →サニングデール  →カルストンライトオ
この3点か。次点はシーイズトウショウだが、この3頭の次と評価。つづきは枠が出てから

おまけ


シルヴァーゼット


セントウルSから始動する予定だったのが、ここまで伸びてきたのは不運だったが馬体は1200m重賞を何勝もできそうなもの。この馬も池添騎手のためデュランダルシーイズトウショウが引退するまでが問題だが、しっかりとした騎手さえ乗せて調教を積み込んだあとの活躍が楽しみ。今回は必要なし

*1:スプリンターズSの勝ち馬のほうはまさに"強い"短距離馬が名をつらねている

*2:外枠の先行馬にあまりにも不利すぎる。内枠の出負けによる不利は少なくなってレース全体としては良くなったが、スプリントのチャンプを決めるレースで出負けする馬なんて始めからそのような資格はない。

*3:フェアという点を考えると目に見える出遅れての不利よりも、先行しにくさという不利のほうがフェアということなのだろう

*4:ゆっくりといってもそれなりのペースだが

*5:スイープトウショウのローズSでの早仕掛けの問題もあるし

*6:負けは中山1800だけ

*7:外国馬弱いし

*8:戦績を見ていると1着がサイレントウィットネスばかり

*9:ゴールデンロドリゴは直線勝負なので負けたが

*10:複勝に入らなかったのはNSTOPと0.2差5着の福島民友

*11:中山で0−0−0−2