その血が騒がせるのは2マイル

ああ、あまりにもすばらしいその馬体だ

今週の名ホースはイナリワンか。強いことは映像や馬柱で知っているが、あらためて戦績を見てみると中央転厩してから、この馬1番人気になったことがない。これだけの馬がである。それはもうオグリキャップがいたからなのだろうが、ナスルーラがもろに出たムラっ気のある馬だったからなのか。ともかくも1番人気になっていないのだ。よっぽど、新聞社に嫌われたのだろう。春と宝塚を制しても1.46.7で毎日王冠を2着しても。
とにかくも天皇賞。非常に困っている。カンファーベストウインブレイズだ。こいつら本当に出てくるのだろうか?今までどちらも2000より長い距離を使っていない。しかし、血統は父系がノーザンテーストアンバーシャダイメジロライアンという文句のない血統なのだ。まあ、この血統は長距離得意とみせかけて実は3000くらいがベストだったりするのだが、とくにカンファーベスト母父シンザン。しかし、2400も経験していないなどというのはあまりにも盾のローテーションではない。G1実績もあるわけではない。それでも買いたくなってしまう。危険だ。
登録名を見てすぐ目にとまったイングランディーレ。去年はこいつにやられた。「てめ、このボケなんで逃げんねん」と皐月賞で後藤をこのボケボケいってるひとと同じ感想を持った人も多かろう。去年はアルアランが逃げたのだが、結果的にはヒシミラクルの3角からのロングロングスパートで後半5Fを地獄にした。
13.0-12.2-11.9-11.9-12.4-12.4-12.2-12.9-12.7-12.2-12.9-12.3-11.9-11.7-12.1-12.3
今年は去年と違うのは有力とされるザッツとリンカーンが先行策をとる馬であるということ。ザッツザプレンティにはロングスパートをしのぎきるスタミナがあり。リンカーンにはそれに追いすがるスタミナがあること。今年も3角からの激戦は先行する馬の乳酸を限界まで貯めるだろう。ここで、後ろの馬にどれだけチャンスがあるかは、ラスト4Fでどれだけ勝負できるかにかかるのだが今年の差し馬にはその勝負に強い馬が2頭もいる。


ファストタテヤマナムラサンクスだ。


ファストタテヤマにとって去年の盾でどうしても借りを返したかった。この馬が十分な力を発揮できるような、3000以上のレースはそうない。しかも、重賞を何勝もしていて賞金をもっていれば出れるレースはおのずとステイヤーズS阪神大賞典、そして春の天皇賞。1年で目標にするレースがこの3つ、いや2つしかない。
しかも、走るコースといえば京都となるともう本当に年に1度くる。桜もまいちる初夏の蒸し暑い熱い熱い淀の坂越2ハロンのみ…


2003年5月4日
3角。思いの交差点で角田の腕がひきちぎれるほど動き始めた。それにつられて何頭かしかける。武は馬群をさばくのに手間取っている。名手も困惑するこのダンゴレース。安田は…動けなかった。4角を向くまで進路は塞がれた。
国民に何の休日かがほとんど知られていないこの日。安田康彦メイショウドトウで、そして前年の秋にのがしたこの勲章を掲げるために最高のパートナーの手綱を握っていた。俺達は安田の馬券を握っていた。
イングランディーレはスタートで完全にタガノマイバッハに負け。これまでのレースのようには逃げれず。本田騎手のアルアランが逃げた。ダート馬アルアラン。そのペースはグチャグチャになっていき馬群はおさまらない。それでも最初にスタンド前を通るころには納まっていた。長距離が好きな人間はこのスタンド前の光景に快感を覚える。本来ゴールのはずの、次週かけぬけるはずのその前を通る。穴オヤジの奇声が怒号が飛ぶ。掲示板のタイマーが過去の数々の名馬達が刻んだ時を刻む。騎手達はまだジッと手綱を絞る。それでも、すでに馬を手の内にいれている。みんな手はグーだ。
向こう正面でアルアランのスタミナ切れとともにペースが落ちていく。ふいに歓声。ヒシミラクルが動く。直線を向いてようやく安田の道はひらいた。差が…つまらず6着。


ナムラサンクスに渡辺がはじめて乗ったのは、長い休養から明けた2戦目の阪神2000m三木特別だった。(なんで、渡辺や?トップロードと性質の似てるこの馬にあいつのせてもまた失敗するやんけ)それでもナムラサンクスの力を信じていた。結果4着。次3着と田嶋の2着をはさんでまた4着。(ふざけんな渡辺。これじゃ中日新聞杯に間に合わない。)僕はこの当時、ナムラサンクスの適性距離を1800〜2000m。ベストはまだ走っていない東京と考えていた。それは父とイメージをかさねていただけに近かったのだが、3歳時のサンクスは愛知杯で見せ場たっぷりの4着(橋本だったらまず3着だった)。神戸新聞杯シンボリクリスエスノーリーズンの3着(まさか、骨折あけのノーリーズンに完封されるなんて信じられなかった)。適性は中距離というか、ほぼ東京1800だろうと考えていた。この時点で前年勝っている1000万クラスの中距離を勝てないはずはなかった。しかし、渡辺が降ろされることはなかった。
異変に気づいたのは比叡S。私は日本シリーズを見に行くフリをして、はるばる京都までナムラサンクスを見にいっていたのだが、その馬体をみて驚いた。驚愕とはこのこと。前よりデカく脚が長くなっていた。
それだけではない。もともとかなりバランスのいい馬体をしていたナムラサンクスの体重はどんどん増えて、まるでステイヤーの体つきになっていた。飛びも大きく、もはやローカルでは力を出しきれない。当然のように死ぬほど単勝を勝った。このとき勝ったのがシルクフェイマス。当時の馬柱には勢いで昇級もいけると陣営のコメントが書いてあったが、2000までしか経験のないのにサンクスに勝てるはずもないと軽く消し飛ばした。それがあの強さ。詐欺だと思った。とくにいきなりものすごいライナーのホームランをぶちかました金本がいいかげん詐欺だと思った。どうみてもうてなそうなウイリアムスとか詐欺と思った。
話はもどって、案の定直線で勝負できる京都の万葉→東京のダイヤモンドと相手も準OPクラスではあるが長距離を連勝した。ついに阪神大賞典から春の天皇賞という王道ステイヤー路線で穴馬の一角として挑戦することとなる。いまさら父の血を思い出しても仕方ない。


参考
天皇賞一覧@ニフ帝
http://keiba.nifty.com/db/search_race.php?key=%C5%B7%B9%C4%BE%DE%A1%A6%BD%D5&y4=&jyo=