レースの本質

横山の誤算はスローに落とそうとしたのをタップダンスシチーに見ぬかれてしまったこと
12.6 - 10.7 - 11.0 - 12.1 - 12.1 - 12.5 - 11.9 - 12.1 - 12.0 - 11.4 - 12.7
横山は予定どうりテンの3Fで後続を置き去りにすると、1,2コーナーはそのままのスピードで走り切った。この時点でタップダンスシチーとの差がおよそ7馬身。そこで、向こう正面にいくとペースを緩めた。これは馬群を落ちつかせるためである。後続はそれに合わせて折り合うために緩めた。



しかし、タップダンスシチーが刻みたいラップはこれじゃなかった。1Fを12.5に落とされるとイレ込み始め、いきたがる*1。ここで、教科書どうりに乗るならば手綱を絞るところだ。だが、佐藤はタップを思いのままに行かせた。と同時にシルクフェイマスの四位騎手も全く迷うことなく進出。この瞬間に私は驚いた*2。四位騎手は完全に信用しきっていた。これしかタップを破る方法というのがないというのもあるだろう*3、それにしてもみくびっていた。



予定どうりに内埒をとったタップだが、馬場のためか埒沿いを走らずに真中を走る。坂でフェイマスにつめよられようとしたが、そこから内埒に併せるとさらに加速。後続をさらに突き放して、2分11秒1で走り切ってしまう。



レース後は逆回りにウイニングランをして、観客の近くまで行きムチやヘルメットなどを観客席に投げ込む佐藤哲三。自分の思う以上のレースをして、アウトローな騎乗で圧勝。天井のないハイテンション。右まわりの凱旋門賞で勝つには絶対に内埒が必要だ。凱旋門についていろいろ研究し、向こうの騎手は絶対に内埒を与えてくれないと知るだろう。
逃げるのがいいかもしれない。怖いのは包まれること、外枠が欲しい。



ザッツやツルマル、フェイマス、タテヤマあたりのベストパフォーマンスを見ていると、サンデーサイレンスは孫の代の一流馬になるとラップの刻み方を遺伝子で覚えているのかもしれないと思えてきた。となると、大事なことは馬の力を信頼してある程度好き勝手にやらせること。乗り変わりは厳禁。ツルマルボーイは乗り変わりで安田を勝ったじゃないかと言われるかもしれないが、安田記念のマイルのペースが丁度よかったので上手くレース運びをすることができたのではないか。
ここで重要なことは、こういう変態馬*4というのは勝ちタイムを予想しやすいということだ。馬場差、個体差というものはあるにせよ。彼らは自分のペースでレース運びしたい。G1ではある程度のペースができる。また、変態馬が嫌うのはトライアルレースやG1らしくないスローペース。ツルマルボーイがドスローの大阪杯で負けたのも納得がいく。
また、サンデーサイレンス中心の4歳世代が好走どまりばかりなのも納得。彼らが勝つならば緩い逃げ馬のいるレースだろう。



実際はシンボリクリスエスとかもそうなのであって、サンデーサイレンスの瞬発力にまかされたレースを見続けてきたせいで感覚がおかしくなっているが、本来、平均的に好きなペースを覚えさせて、強い馬が強さだけがうきぼりになるのが本質である。それを、なるべく着差がつかないようにタイムオーバーにならないようにしているのか現状*5の教科書。



マイル戦ですらマイルチャンピオンシップのような着差がつかないレースもある。ここで、ひとつ仮説をたてるともしかすると現在の競走馬の一流のラインというのは昔であれば適正とされていたスピードでは遅く、昔よりも速いラップを刻めるのではないか。それが、思い切って逃げる騎手がいないためにペースがどんどん遅くなって強い馬が自分のレースができずに折り合いをかいてしまう*6とも考えられる。



結局、強い馬には教科書どうりの騎乗ではなく馬にまかせて乗ること。それには馬との信頼関係が必然で、今回は乗り変わりのデムーロザッツザプレンティゼンノロブロイ@田中、安藤@ツルマルボーイが教科書どうりに乗ったために中途半端な着順になってしまった*7
それとは逆にタップ@佐藤はもちろんシルク@四位、リンカーン@武は何度もコンビを組んでいる。



ゼンノロブロイも後半57秒台で走ることもできるのだから、速く騎手を固定して思い切った乗り方をしてあげないといつまでも中途半端な着順のままになってしまうだろう。



教科書どうりでいいレースもあるが、少なくともタップダンスシチーヒシミラクルのような変態馬がガチンコで出てくるG1ではそれが通用しない。乗り変わりというのはもってのほかということだろう。秋にはアンカツキングカメハメハに乗ることになる。ザッツザプレンティは新しく思い切りのいいパートナーをつれてこなければ、今後かなりの苦戦をしいられる。



去年の宝塚記念のポスターを思い出した。そこに書いてあったキャッチコピーは


一心同体 人馬一体 ヒシミラクル

*1:実際にはこれが正しい

*2:リンカーンは届かないかもしれないと思った。この時点でパターン1のローエングリンのレースは終わり

*3:実際はタップの内側に入っていければよかったのだろうが

*4:自分の好きなペースで自分勝手にレースのレースをしたい馬

*5:重賞においても、着差のつかないような平均ラップの遅いレースに仕上がることが多い

*6:その様はさもかかっているようにも見える。今回のタップダンスとか、オークスでのダンスインザムードとか

*7:横山の逃げは別でほぼ完璧で素晴らしい。勝つならあれしかない