残り2週のドラマ 瀬戸口師は純粋に必死に勝ちを求めて:Leading Trainer Race 3

さて、今週繰り広げられているリーディング争奪戦シリーズもいよいよ最終回の第3回にしてようやくたどりついた本題。今週の瀬戸口。今までのは全部フリですの。


リーディング争奪戦


その1 今年は久しぶりに熾烈なリーディングトレーナー争い
その2 藤沢和+ペリエ=1着 +ノリ=2着 +デザーモ=3着

第1回では今年のリーディング争いはちょっと特殊という話、第2回ではその原因である藤沢和雄厩舎の失速についてを書きました。まだ、読んでいない読者の方は併せて読むことをオススメします。ちなみに、このブログの中では調教師カテゴリはたぶん競馬マニアなら外れのない記事ばかりですのでよろしくどうぞ。



今年のリーディングトレーナーの行方


もう一度おさらいしてみよう。今年のリーディングトレーナー争い。12月12日時点、つまりあと2週を残してトップを走るのは瀬戸口厩舎


1位 瀬戸口 49勝
2位 藤沢和 47勝
3位 音無  46勝
4位 森秀行 38勝


このまま瀬戸口厩舎が逃げ切るか、藤沢和雄の長年の経験による追い上げがみられるのか。



瀬戸口 勉


関西の超名門上田武司厩舎所属の騎手(調教師のサイアーライン)で上田厩舎解散の数年前(1973)に開業。G1までのぼりつめたのは、オグリキャップ有馬記念(1988)。ここまでに10年かかっている。この頃から平均勝ち鞍が30勝ラインに乗ってくる。さらに10年かけて1997年頃からは毎年30勝以上をあげている。福永騎手の成長とともに勝ち星も、厩舎に集まる馬のレベルもあがっていった。2002年からは重賞で4勝以上あげてきている熟練の調教師だ。


リーディングでの最高位は1993年の3位。ちなみにこのときが藤沢和雄師がはじめてリーディングトレーナーを取った年で順位は下表のようになっていた。関西で同率2位。


1位 藤沢和雄 44勝
2位 伊藤雄二 38勝
3位 渡辺栄  36勝
3位 瀬戸口勉 36勝
この次の最高順位は1998年の5位。次が去年の6位である。3度、優秀調教師として表彰されているがリーディングトレーナーになったことはない。今年は関西で言っても初めてのリーディングトレーナーになるチャンスなのである。



今年にかける意気込みは他にもある。というより、これがもう全てだろう。JRAの資料からそのまま抜粋すると


●生年月日   : 1936年 11月 3日
●出生地/出身地: 鹿児島県/鹿児島県
●免許取得年  : 1973年
●所属場    : 栗東T・C
現在、69歳


再来年が引退の年なのである。クラシックでいうと来年が最後の年となる。とりのがした冠はネオユニヴァースの置き土産の菊花賞桜花賞以外の牝馬の冠。他の八大競走ではオグリキャップで勝った有馬記念以外は取っていない。


それ以上に今の目標はリーディングトレーナーにあるはずだ。その意気込みは今週の出走馬にも現われている。今年は春から好調でとにかく1勝をあげることを積み重ねてきた。調教に関しては経験も熟練もある瀬戸口師だが、リーディング争いには無縁。とくに、リーディングトレーナーの取り方ということに関しては新人同様。だからがむしゃらにやれることをやるしかない。



今週の出走馬一覧



瀬戸口厩舎

2005年 3回 中京 5日 10R メイショウサムソン
2005年 3回 中京 5日 11R マチカネエテンラク 連闘
2005年 5回 阪神 5日 4R ノボリハウツー   中2週
2005年 5回 阪神 5日 9R イースター
2005年 5回 阪神 5日 10R グレイシアブルー  中1週
2005年 5回 中山 6日 11R エイシンアモーレ  中1週
2005年 3回 中京 6日 11R マルカキセキ    中2週
2005年 5回 阪神 6日 11R ラインクラフト
2005年 5回 阪神 6日 12R ビッグジェム    連闘

ともかく全力でリーディングを取りにきていることがわかる。惜しみなくレースに使ってきている。これも馬主の協力があってのことだろう。スタッフも初めてのことにとてつもないモチベーションがある。とくに日曜の3場メインが凄い。

藤沢和雄厩舎

2005年 5回 中山 5日 8R ピサノグラフ    ノリ
2005年 5回 中山 5日 9R ブラストサンデー  デザトミ
2005年 5回 中山 5日 11R キングストレイル  デザトミ
2005年 5回 中山 6日 3R サトノソニック   北村
2005年 3回 中京 6日 11R ウインラディウス  鹿戸

対して、土曜中山に有力馬を集めてきた藤沢厩舎。まあ、来年のエースのキングストレイルがデザトミ先生ってのがちょっと3くさいがこの馬は中山だといくらデザトミ先生でもしゃれにならんと思う。

音無厩舎

2005年 3回 中京 5日 11R フラワリングバンク
2005年 5回 阪神 5日 3R ゲイル
2005年 3回 中京 6日 3R アッチッチ
2005年 3回 中京 6日 12R スマイルフォライフ
2005年 5回 阪神 6日 8R アポロイレヴン




今週は日曜日に3重賞


阪神牝馬S、CBC賞、フェアリーSの3つが開催される。この3重賞にはなんと瀬戸口厩舎のそれぞれのカテゴリのエースが出てくる。おそらくどれも本命サイドに押されるだろう。とにかく残した持ち駒は全て使っていこうという方針だ。エースクラスでも休ませない。


阪神牝馬S ラインクラフト
CBC賞  マルカキセキ
フェアリーS エイシンアモーレ
面白いのは全部主戦が福永騎手だったという点。どう騎手をやりくりするか。


まずは、阪神牝馬Sに出走するラインクラフト。今秋はすでに3戦こなしていて、ローズS、秋華賞マイルCSの全てで複勝圏に入っている。来年のビクトリアカップに向けて、マイルを使っておきたいというのはタテマエでメンバーの落ちるここで確実に1勝という狙いだろう。
前走レコードペースの反動とデキは気になるところだが、マイルに戻ったなら例え7割くらいのデキでも勝ってしまうと思う。アズマサンダースやマイティーカラーなど、面白そうなところまで回避してしまった。今の阪神はパワー重視の状態、他に有力視されるレクレやアドグルなどのサンデー系は全く敵ではない。マイネサマンサを泳がせずにちゃんと捕えれば勝つだろう。馬場造園課がアドグルを勝たせるような馬場にしない限り。11頭だてになって福永騎手が乗ってくるココの期待は大きい。


CBC賞
ここに出てくるマルカキセキも夏からつきペースで使われ続けている。そのなかにスプリンターズSがあって一回ピークを迎えているはずなのだが、とにかく瀬戸口師もはじめてのことに必死なのだろう。ルメールを配してきたのでデキがないってことはないと思う。


フェアリーS
2歳最速牝馬にはエイシンアモーレを使った。阪神JFからの直行自体は例年もあることだから問題ないと思うが、乗せてきたのがヨシトミ先生。2,3着がいらない勝負。ヨシトミ先生にそれができるか。あと、このレースは枠がかなり重要なのでどこをひくかも注目。


この3重賞ではラインクラフトが堅く、CBCはメンバーが集まっているので枠とマルカキセキのデキ次第。フェアリーSはヨシトミ先生が勝ちきれるかにかかる。馬は相当良いので3重賞制覇もありうる。

他のレース


重賞以外のレースはどうだろうか。


瀬戸口厩舎

2005年 3回 中京 5日 10R メイショウサムソン
2005年 3回 中京 5日 11R マチカネエテンラク 連闘
2005年 5回 阪神 5日 4R ノボリハウツー   中2週
2005年 5回 阪神 5日 9R イースター
2005年 5回 阪神 5日 10R グレイシアブルー  中1週
2005年 5回 阪神 6日 12R ビッグジェム    連闘

まずは2歳2頭。東スポ杯2歳Sでフサイチリシャールのレコードの2着メイショウサムソン。中京2歳Sで斤量は重いがデビューから乗っている石橋騎手でメンバー的に勝てそうだ。


次は京王杯2着のイースター。9頭立てのさざんかSに出走する。敵はアグネスタキオンの2頭エアデュシスとロジック。ロジック×武豊もそこそこ強敵ではあるが、エアデュシスは今年の京都1400の新馬戦の中ではトップクラスのハイラップレースを圧勝している馬。


エアデュシス新馬戦のラップタイム

12-10.7-11.1-11.6-12.1-12.2-12.7

33.8-57.5というG1レベルのラップで先行争いされたレース。これを4コーナー馬なりから突き放して楽に0.6秒つけるのだからあたり前に桜花賞候補。この牝馬をどれだけ凌げるかがカギになるだろう。パワー馬場の阪神を味方につけれるのは血統的にはイースターだが馬格はない。ちゃんと間隔を明けて使ってきた分だけ成長できてるか。


マチカネエテンラクは連闘で中京の芝1200に出走。なんで昇級していないのかわからないチリエージェに、アフレタータなど結構厳しいメンバー構成。叩き4走目の前走でようやく結果がでたので、その勢いを出せるかがカギ。


ノボリハウツーは障害3戦目。2戦はどちらも4着だが着差は0.5、1.1。3走目で上澄みがあれば勝てるかも。


グレイシアブルーは阪神芝1400mのハンデ戦北摂特別にルメール騎手で出走。メンバーは軽めなのでたぶん1番人気になるんじゃないか。ハンデ53キロだが、追い込み一辺倒の馬で2着が多い馬。まだまだ阪神も外回してさせるほどではないのでそこが泣き所。ルメール騎手がハーツクライみたいな追い込み方をしてくれれば…2着。だめやん。


ビッグジェムの連闘は降級して500万を勝ったが、もともと1000万下では全くいいところがなかっただけにこの連闘はメンバーはましそうだが、きつめかな。



おわりに


来年度が最後のサンデーサイレンスとのラストクロップとともにクラシックになる瀬戸口調教師。それだけにマルカシェンクは大事に使っていきたかったところかもしれないが朝日杯を目指して故障。診察は軽度だが、これからの冬成長の時期を治療に専念するのではダービーにはかなり厳しいだろう。


ただ、マルカシェンクが残してくれた勝ち星のおかげでリーディングにいることも事実。おそらくラストチャンス。一ファンとして、瀬戸口厩舎がリーディングトレーナーを取るのを見てみたい。瀬戸口先生に預ける馬主の人はもっと強い気持ちなのではないかと思う。スタッフの力があわさって大きな勲章を取りにいく。今日、リーディングの順位を表すのに瀬戸口調教師という表現ではなく厩舎という表現を使ったのはそういう意味を持っている。


個が注目され、馬や騎手がとりあげられる競馬界で調教師、厩舎のこんなことを書きたいためにまるまる1週使った。幸いか今週は G1 もない。ラストシーンを楽しむために、こんな ひと ドラマはいかがでしょう。



参考


netkeiba 瀬戸口勉データ
http://db.netkeiba.com/index.php?pid=trainer_results&id=00212
マルカシェンク
http://db.netkeiba.com/horse/2003102542/
日刊競馬で振り返る名馬 - オグリキャップ(1990年・第35回有馬記念
http://www.nikkankeiba.com/jra50/47/47.html
瀬戸口勉 騎手プロフィール
http://csx.jp/~ahonoora/setoguchi_tsutomu1.html
瀬戸口調教師人間を断念
http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/keiba/5126/L30
役に立たない?競馬分析〜競馬Data調教師編瀬戸口勉
http://www13.ocn.ne.jp/~horse/trainer_setoguti_tutomu.html