本物のマラソンレースになったダイヤモンドステークス
シェイクマイハートが逃げ、それにフサイチアウステルとオペラシチーがせりかけることによって真の長距離戦といえるハイラップが生まれた。原因のひとつとしては、前にいたのがバルジューとペリエだったことにもある。ペリエ騎手は追うときの技術や、馬をポンと前につけたり馬なりのペースで走らせるのは得意だが、先行力が高い馬に乗るとそれが災いしてハイラップを生んでしまうことがある。朝日杯でマイネルモルゲンにのったときや、去年のダイヤモンドSでのコイントスがその例だ。もちろん、ゼンノロブロイの一昨年の有馬やメイショウボーラーの朝日杯のように馬自体が充実していればそれに耐えられる例もあげられる。今回のフサイチアウステルも一応7着には粘っているのだからこのラップが極端に速すぎたというわけではないだろう。また、佐藤哲三がオペラシチーのスタミナにかなり自信を持っていたであろうこともペースを落とそうという発想にならない雰囲気があった。
■
さて、ラップタイムをみてみよう
ダイヤモンドSのラップタイム
12.8-11.7-12.4-12.5-12.2-12.6-12-12.7-12.7-12.1-12.5-12.7-12.4-12.4-11.7-12.3-12.6
道中で13秒台のラップを1度たりとも刻んでいない。先行馬がこのラップで逃げていれば、後方の馬でもほとんど同じタイムでついてこなければならないので結局道中で息をいれることはできない。先行馬との心肺面での差を作れるのは最初の3Fだけである。
ちなみに、13秒台のラップを刻まなかったレースというと天皇賞・春を見てもこの10年で3回しかない。ヒシミラクルが超絶ロングスパートで勝利した2003年、マヤノトップガンが未来永劫破られることがないであろうレコードを叩きだした1996年、そして去年だ。さらに遡るとビワハヤヒデが勝った年やマックイーンの最初の春、ライスシャワーがマックを破った春も13秒がない。
いずれのレースも共通するのが勝ち馬は4コーナーというレベルの馬であること、逃げた馬は4コーナーですでに勝負がついてほとんどシンガリで負けていることである。
ダイヤS シェイクマイハート 1-1-2-11 最下位 2005 シルクフェイマス 1-1-1-2 最下位 2003 アルアラン 1-1-1-2 最下位 1996 ビッグシンボル 1-1-1-1 6着
こういうレースになると上位には当たり前のように長距離血統がズラリと並ぶ。ダンスインザダークのワンツーをはじめとして、他の馬もそれにつづく。掲示板に乗った馬とその父をみていってみよう。
1着 マッキーマックス 父ダンスインザダーク
2着 メジロトンキニーズ 父ダンスインザダーク
3着 トウカイトリック 父エルコンドルパサー!?
4着 ハイフレンドトライ 父リアルシャダイ
5着 ファストタテヤマ 父ダンスインザダーク
トウカイトリック…空気読め。ではなく、ダンスインザダークに囲まれたなかのミスタープロスペクター系のエルコンドルパサー産駒でこの順位は極めて優秀なもの。
SS BT サカボ、サカボ リアルシャダイ ダンス、BT レインボー SS、Caro リヴァマン リアルシャダイ
もしかすると、エルコンドルパサーは長距離血統だったりして。
どちらにしても、ここで後続をぶっちぎってた上位3頭はハイラップハイペースになればいつでも上位にくる連中だろう。とくにこのラップを相当なロングスパートで押しきったマッキーマックスは阪神大賞典、春の天皇賞はもちろんのこと、今年は京都で行なわれる宝塚記念でも最有力な一頭に浮かび上がってきたのは間違いない。そう考えると、この馬がこれまで使ってきたレースはほとんどがスローのあがり勝負であり、ほとんど合わないレースだったと言えるかもしれない。ひとつだけあったとしたならそれは菊花賞だけだったのか…
プレイバック2003菊花賞
1着 ザッツザプレンティ
2着 リンカーン
3着 ネオユニヴァース
4着 ゼンノロブロイ
5着 マッキーマックス
この上位馬はネオユニヴァースが2冠、ザッツはJC2着、リンカーン、ロブロイはご存知のとおりの活躍。6歳にして、遅れてきたマッキーマックス。あのときの鞍上藤田が、再び開花させた。アイポッパーで長距離のタイミングをつかんだ藤田。シルクジャスティスを飛ばした藤田も過去の話、今なら長距離での経験を買える。6歳にしてまだ17戦目。おそらくこの馬にとって最高の舞台となるのは区切りの20戦目で、ディープインパクトのいなくなった宝塚記念になるのかもしれない。