宝塚記念 ゼンノロブロイの生き様

2003年 宝塚記念


ナリタトップロードジャングルポケットマンハッタンカフェらが相次いで引退。前年のクラシックからはダービー馬が引退。次代を担うのは2桁人気で勝った皐月、菊花賞馬ではなく前年の年度代表馬シンボリクリスエスという評価。休み明けのぶっつけG1にもかかわらず数多く票を集めた。
さらに、3歳の2冠馬ネオユニヴァース安田記念を制したオールマイティーホースのアグネスデジタル有馬記念であっといわせたタップダンスシチー。でもって誰かが前日ヒシミラクルに2000万くらいつっこんだ。


戦前から心躍る前半の総決算といって良いメンバーが揃った。そして、阪神競馬場は暑かった。高校球児がグラウンドで汗をかき、シンボリクリスエス黒鹿毛を初夏の太陽が焼き尽くす・・・



ゼンノロブロイの前にはいつもシンボリクリスエスがいた。
青葉賞を圧勝し、ダービー2着、神戸新聞杯1着。ここまでの重賞の戦跡が偶然にも同厩の先輩と同じ。その運命は皮肉だった。ここから先輩は3歳で天皇賞をめざしたが、かちあうためにロブロイは菊花賞へ向かった。ロブロイは4着。これが運命の分岐点になった。
シンボリクリスエスは2年連続で秋の3つのG1を1、3、1着で終えた。テイエムオペラオーには届かなかったが、タップにつけられた9馬身をレコードでつけかえした。輝かしい成績を残して引退。


シンボリクリスエスが引退するとゼンノロブロイが藤沢厩舎のNO.1となった。だが、春は日経賞天皇賞といずれもG1で上にはいない格下に負けた。宝塚記念ではリンカーンにちょっとコースを切られるともうやめてしまうヘバりっぷり。G1が遠い。秋の京都大賞典ナリタセンチュリーにきっちり差し届かれた。輝かしい先輩と比較され、ゼンノロブロイにはそのイメージがつねにつきまとう。当の本人は知ってか知らずか。


これでは下の世代から秋のG1を目指す怪物おかわりキングカメハメハ横綱競馬には到底かなわない。ゼンノロブロイが幸運だったのは併せ馬の相手として一つ下のダンスインザムードがいたことだ。


キングカメハメハ故障


ゼンノロブロイの1つ目の転機が菊花賞ならば、2つ目の転機はキングカメハメハの故障だろう。ペリエの手腕があっても・・・JCでデルタブルースに乗ったアンカツも言ってしまった。それほどにキングカメハメハの存在は大きい。
本命不在の天皇賞でもゼンノロブロイは前年度クラシックから唯一順調にきている馬ということで押し出されたような1番人気だった。だが、ペリエを迎えたロブロイは馬が変わったかのように弱みをみせなくなった。天皇賞を鮮やかな中段抜け出しで勝つと、続くJC、有馬では直線で抜け出し、2番手マークと3つのG1でバリエーションあふれる勝ち方をした。



直線を向いてシンボリクリスエスは3コーナーからのペースアップの勝負に真っ向から受けて立ち、荒れる内をもろともせずに直線で真っ先に抜け出した。タップダンスシチーは埒をとれず坂をきれいに登れない。シンボリクリスエスの勝ちに見えたとき、後方から両腕を必死に動かす角田が一気に先頭に変わった。ツルマルボーイネオユニヴァースがせまったところでタップがようやくクリスエスに馬体をあわせてゴール。
シンボリクリスエスのぶっつけ宝塚は5着だった。

秋のG1を3連覇。有馬記念のレコードを塗り替えてもゼンノロブロイシンボリクリスエスを超えたと感じられない*1のは、同世代に強いライバルがいないことと現役最強のタップダンスシチーが前年の有馬記念で万全の体制ではなかったことにある。


だが、有馬記念タップダンスシチーに対して2番手につけて堂々と戦いに行ったレースっぷりはシンボリクリスエスのやる横綱競馬を超えていた。シンボリクリスエスとは違う。菊花賞天皇賞といった淀の坂超えを経験することで、コンスタントにあがり5Fで57秒の脚を使うことができるようになった。自在性のあるこの馬は、阪神タップダンスシチーを倒すということに関してはシンボリクリスエスを上回っていると思われる。



タップも金鯉賞であまりの小頭数に楽な逃げを打ってしまった。結果、宝塚記念の前哨戦としての内容は薄い。むしろ、57キロで勝負に行ったアドマイヤグルーヴを押したいところだ。今回はビッグゴールドコスモバルクという相手もいる。
現役最強であるタップダンスシチーに埒をとらせても勝てるとなれば、この馬しかいないだろう*2


1度しか関西遠征のなかったシンボリクリスエスと5度の関西遠征を経験しているゼンノロブロイ。ロブロイは何度も乗り換えで好走するレースセンス*3もある。神戸新聞杯を勝たせてくれたデザーモがコンビを組むことになった。今のロブロイに甘さはない。


ゼンノロブロイタップダンスシチーに感謝しなければならない。超える機会を与えられたのだ。夏にはさらに大きな目標を持っている。日本に土はもういらない。


さあ、先輩の大きな背中を超えて夏の大舞台へと飛び立とう



参考 以下すべてnetkeiba.com


ゼンノロブロイ成績
http://db.netkeiba.com/index.php?pid=horse_detail&id=2000101517
シンボリクリスエス成績
http://db.netkeiba.com/index.php?pid=horse_detail&id=1999110099
2003年宝塚記念
http://db.netkeiba.com/index.php?pid=race_detail&id=200309030411

*1:少なくとも私が

*2:つまりは1点勝負なり

*3:先行力