ホースメンクラブ蒸発事件

トラセンに新しいカテゴリ「クラブ法人」ができていたのに全くエントリがないので私が過去に2chのスレッドでとりあげられたものをまとめたこのホースメンクラブのエントリではじめたいと思います。ホースメンクラブのこの事件は現在多く広まっている一口馬主というスタイルが、条項によって非常に危険な契約となりうることを明らかにした事件でもあります。2002年にも経営不振により、クローバークラブという一口馬主法人が解散しました。


それではどうぞ…

あなたも馬主になれ、配当金ももらえます。 

昭和56年5月9日読売新聞夕刊より。

をキャッチフレーズに、競馬ファンから多額の出資金を集めてサラブレッドなどの競走馬を購入、クラブ組織で運営していた関西の老舗の馬主クラブ「ホースメンクラブ愛馬会」(京都市)が、8日までに各会員へ「閉鎖通知」をだしていたが、同日京都府警捜査二課は同クラブの運用資金に疑惑があるとして、背任などの疑いで事実調べを始めた。また、中央競馬会も係員を京都に派遣、関係者から閉鎖の経緯について事情を聞く。

閉鎖を通知を出したのは、京都市中京区御池通新町西入ル根崎ビル三階に事務所をおく「ホースメンクラブ愛馬会」(橘八重子会長)。同会は、競馬ブームがピークを迎えた昭和49年、中央競馬会に馬主登録、さる昭和54年の桜花賞には優勝馬ホースメンテスコを送り出すなどの実績を誇る関西の名門クラブ。現在登録馬はホースメンボールド、ホースメンジョオーなど9頭。(注、他にホースメンワイルド、ホースメンボナビー)
同会は、(中略、一口の説明なので)会員が1000人程に膨れ上がった。(中略、一口の説明なので)2ヶ月ごとに会員の銀行口座に振り込まれることになっている。


ところが、今月に入って、会員の大阪府枚方市の理容店経営Aさん(34)に突然「4月末をもってクラブを閉鎖します。所属馬については売却処分しました。近く配当金と売却代金を払います」の書類が郵送されてきた。Aさんは持ち馬が勝手に処分されることに納得がいかず、クラブに電話したが、応答はなかった。
一方、神戸市に住む会社員Bさん(35)の場合は配当金のトラブル。Bさんはホースメンボールドなどの2頭の馬にそれぞれ3口(注、9万円)ずつ出資、会員になったが、昨年10月以降、配当金は一切ない。Bさんの計算によると、両馬は10月以降、ボールドが7回出走、1ー5着に4回入着、計1593万円の賞金、もう一頭は8回出走、5回入着、計1600万円を稼ぎ、Bさんは「両馬について数万円の配当があっていいはず」と話している。事務局にたびたび電話しても「しばらく待って欲しい」というだけだった。
中央競馬会関係者の話では、同クラブがつまづいた裏には、今年1月、2億円近い借財を抱えて失踪、行方不明になっている中村武志師に8000万円を融資、その半額が焦げついたと言われることから、運転資金の捻出に困り、閉鎖に追い込まれたのではないかという。同クラブ関係者は「倒産ではなく、あくまで競走馬の売買と配当業務についてだけ閉鎖するもので、近く再出発するつもりだ」といっている。

ホースメンクラブというクラブ法人が突如閉鎖、事実上の倒産。信用して出資した会員はただ大損するばかり。一口、3万という値段で会員も泣き寝入りした。これが一口十万という単位ならば大変な民事となっただろう。



5月10日の新聞記事に関連してホースメンクラブ関係の馬を紹介。
 資料は競馬四季報関西版(当時の関西版は年2回の発行)。
 発行日は昭和56年2月1日。

 5歳ホースメンジョオー・2勝・牝・武田作十郎厩舎・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンドラゴン・1勝・牡・中村武志厩舎.・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンファバー・1勝・牡・小林.稔厩舎.・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンボナビー・2勝・牡・中村好夫厩舎.・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンボールド・3勝・牡・中村武志厩舎.・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンヤマト.・3勝・牡・中村好夫厩舎.・馬主ホースメンクラブ
 4歳ホースメンオリオン・未勝・牡・中村武志厩舎・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンジュピタ・新馬・牡・中村好夫厩舎.・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンチカラ.・未勝・牡・中村武志厩舎・馬主ホースメンクラブ
   ホースメンワイルド・新馬・牡・中村武志厩舎.・馬主ホースメンクラブ
昭和56年5月14日日刊スポーツ新聞(関西)より。

大衆馬主組織「ホースメンクラブ」(事務所・京都市中京区、岩崎一郎社長)の責任者らが事務所を閉鎖、「蒸発」していた事件で同クラブの橘八重子取締役(55)が12日、京都府警伏見署に出向き、同署の事情聴取を受けていたことが13日わかった。
橘取締役が姿をみせたのは事件発覚後5日ぶりで、同府警捜査二課員や同署員らに対し、「噂されている不正事実はなく、会員への配当金、売却金の清算はほぼ終えている」と釈明した。
同課は、橘取締役の一方的な説明を聞くにとどめたが、同クラブが株式会社に衣替えした(昭和)53年以降の運営や所有馬の売却処分に不明朗な事実があるとして、改めて資料の提出を求め詳しい事情を聴くことにしている。
同クラブは(昭和)41年ごろ有力馬主らを集めて設立されたが、(昭和)53年に株式会社に衣替え、1口3万円と小口の大衆馬主を募集しだした。ところがこの数年、同クラブの所有馬の成績が振るわなかったことから脱会者が相次ぎ経営不振に陥った。

昭和56年6月2日読売新聞から引用

乱脈経理から、勝手に会員の競走馬を売却、一口馬主の会を閉鎖して問題になっている株式会社ホースメン=本社・京都市中京区、岩崎一郎代表取締役(56)が、1日、2回目の不渡り手形を出しついに倒産した。今後、レースの賞金配当にからみ、会員とのトラブルが一挙に表面化しそうだが、岩崎代表取締役ら会社幹部は、閉鎖直後の先月上旬から雲隠れしたまま。業務上横領などの疑いで京都府警が捜査中。
今回不渡りになったのは、先月28日が決済日の約束手形2通額面総額4500万円。同社は1日、銀行取引停止処分になった。同社の(昭和)55年2月末の決算書によると、負債額は7億円で、さらにその後、大阪市内の不動産業者や北海道の牧場主に多額の手形を乱発、民間の信用調査機関によると、負債額は10億円に上るとみられる。



これは2ch競馬板のホースメンクラブ事件スレッドにおいて調べられた一口馬主の盲点ともいえる約定の中身の一部である。現在、一口馬主として様々なクラブがあるがその経営は必ずしも全てが良好とは言えない。この事件のように畳むように逃げられては対応は難しい。
この事件の背景にはクラブ馬全体として成績不振になってきたことも原因のひとつ*1であるため一口を出資する際、クラブの状況はしっかり目にとめておきたい。


一口馬主でつぶれそうなところ教えて
http://yasai.2ch.net/keiba/kako/978/978540318.html
ホースメンクラブ事件
http://yasai.2ch.net/keiba/kako/989/989626259.html

*1:主たる原因は散財だが